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甘い香りで包まれるフルーツの郷     
                台南県玉井郷

『な〜るほど・ザ・台湾』観光最新情報 2006年9月号掲載

マンゴーは台湾を代表するトロピカルフルーツ。
ジュージーな果肉と爽やかな甘さ。
その美味しさに魅せられてしまった旅行者も少なくない。
そんなマンゴーの一大産地。台南県玉井郷を訪ねてみた。

台南からバスに揺られて一時間。玉井は台南の北東30Kmに位置する小都市である。ここは言わずと知れたフルーツの郷で、夏場を迎えたこの時期は、マンゴーやバナナ、ライチ、パイナップル、パパイヤと、なじみの深いトロピカルフルーツが目白押しとなる。街の中心部にある青果市場では、色鮮やかなフルーツが山積みになっていて圧巻のかぎり。そのようすを見るだけでも玉井を訪れる価値はありそうだ。

 玉井の街は曾文渓が形成した河岸段丘上に開けており、中部山岳地帯の麓にある。水はけがよく、稲作には向かないものの、日本統治時代はサトウキビの栽培が盛んに行われていた。そして、1950年代からはフルーツの栽培で知られるようになる。現在、玉井郷(郷は台湾の行政単位で村に相当)の人口は1万7000あまりだが、そのうちの1万2000人が農業従事者となっている。

 


台湾のマンゴーについて、簡単に紹介しておこう。台湾にマンゴーがもたらされたのは今から400年以上も前。具体的には1561年にジャワ島から持ち込まれたというのが定説となっている。当初は台湾南部の平地で栽培されていたといわれ、台南県の新化や官田などでは、樹齢百年を超えるマンゴーの老木が頻繁に見られる。これは長い年月の中で土着化しており、現在は土芒果と呼ばれている。

 その後、日本統治時代に入り、1916年には三井物産によってインドから数種類の株がもたらされた。これは南洋種と呼ばれ、優良品種とされていたが、台湾の場合は温度が足りず、定着することは少なかった。また、1921年にはフィリピンからも株が持ち込まれており、これは嘉義の農業試験場で研究が進められたが、これは台湾最南部の恒春付近で栽培されるに過ぎなかった。

 マンゴー栽培が飛躍的に成長するのは戦後を迎えてからだった。この時はアメリカや中南米から新品種がもたらされている。なかでも1954年にフロリダからもたらされたアーウィン種は台湾のマンゴーの歴史を大きく変えた。このアーウィン種を改良してできた愛文マンゴーは、通称「アップルマンゴー」とも呼ばれ、美味しさばかりでなく、見た目の美しさと食べやすさもあって、大人気を博している。

 

最近も品種の掛け合わせは盛んに行われており、台湾オリジナルのマンゴーが数多く生み出されている。現在、玉井で栽培されているマンゴーは10種類といわれている。ジューシーで甘さの強い「愛文」、重さが2kgにもなるという大型種「金煌」、1985年に鳳山熱帯園芸試験場で開発された台湾オリジナル種「台農一号」、病虫に強い輸入種「凱特(カイト)」など、いずれも個性派揃いで味わいもさまざまだ。

 今、注目を集めているのは「玉文六号」と呼ばれる品種だ。これは愛文と金煌を交配させてできたもので、紫がかった赤色をしているのが特色。表面は瑞々しく輝いていて、とても美しい。糖度も高く、その味わいはマンゴーの王様ともいわれるほどだ。片手では持てないほどの大きさで、病気にも強く、貯蔵も利く。ちなみに、玉文六号という名は玉井の「玉」と開発者である郭文忠氏の「文」を取って付けられている。そして、六号とは郭さんが六番目に手がけた新品種を意味しているという。

 玉井で気軽にマンゴーを楽しむのなら、やはりかき氷だ。台北で食べるものとは比較にならない美味しさで、しかも値段は半額に近い。青果市場の周囲にはたくさん屋台が出ており、ここで味わうことができる。玉井に着いたら、まずはマンゴーかき氷を味わおう。最近はマンゴースムージーやミルクシェイクなども人気が高い。もし、かき氷の量に圧倒されてしまったら、こちらを味わってみるのもいい。また、青果市場では箱や籠に入ったマンゴーを売っているので、おみやげに購入することも可能だ。台湾内であれば、宅配サービスも受けられる。

 

 玉井を訪れたら、ぜひ午前中にマンゴー畑を訪ねてみたい。朝陽に照らされたマンゴーは、まぶしいくらいの輝きだ。玉井は市街地を少し離れればマンゴー畑に出られる。もちろん、玉井へ向かうバスからも一面に広がるマンゴー畑を眺められる。マンゴーは味わうだけでなく、たわわに実ったようすを見る楽しみもあるのだ。この時期に玉井を訪れることができたら、ぜひ、早朝の散策も楽しんでみよう。

●アクセス
台南からのアクセスはバスが便利。興南客運のバスは日中ほぼ30分間隔で運行されている。ただし、玉井が終点となるのは半分ほどなので、台南のバス乗り場で確認しよう。楠西、曽文水庫、梅山口、天池、桃源、甲仙などへ行くバスを利用すれば、玉井で下車できる。興南客運の乗り場は台南駅前から南西に伸びる中山路沿いにある。運賃は100元、所要約60分。

※交通機関の情報は「な〜るほど台湾」に掲載時のものです。現在とは異なります。

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