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日本製蒸気機関車の復活運転
CK124―環島之旅レポート

『な〜るほど・ザ・台湾』観光最新情報 2007年7月号掲載

 毎年6月9日はファン待望の鉄路節。これは台湾版鉄道記念日で、これまでにも特別列車の運行や日本統治時代の貴賓車の公開などが行われてきた。今年は台湾に鉄道敷設の工事が始まってからちょうど120周年。その様子をレポートするべく、花蓮へと赴いた。

 台湾の鉄道の歴史は1887年6月9日に始まっている。時の台湾巡撫(知事)・劉銘伝によって工事が始められ、その後、基隆―台北―新竹間が開通した。これは台湾総督府に受け継がれ、鉄道網の骨格が形成されて現在に至る。台湾鉄路局では毎年6月9日を鉄路節に指定し、今年は「蒸汽火車(蒸気機関車)環島之旅」と名付けられたイベントを実施した。その内容は、日本製蒸気機関車CK124が台北地区、台中地区、高雄地区、そして花蓮地区を走ること。新竹や嘉義などでは撮影会が行われ、貨物専用線の高雄港線と花蓮港線にも入線したことで、注目を集めた。

 CK124型機関車は1936(昭和11)年製。形式としてはCK120型で、日本のC12型機関車に相当する。日本車輌株式会社製で同型の機関車は台湾に7輌が走っていた。1979年6月には惜しまれつつも引退し、台北市北投区で保存されていた。しかし、徐々に鉄道文化への関心が高まったことで、復元工事が決定。そして、2001年春、大復活を遂げた。現時点では台湾で唯一、運転可能な蒸気機関車となっている。

 CK124は蒸気機関車の中では小型だが、駆動性に優れ、重宝されてきた機関車である。小さいとはいっても蒸気機関車らしい風格はたっぷり。そのため、この機関車が走るたびに、その雄姿をカメラに収めようと鉄道ファンが殺到する。日本と異なるのは、女性の鉄道ファンが目立つことだろうか。家族連れはもちろんだが、カップルでこの機関車を追っているという若者もいた。

 6月18日、花蓮駅は早朝から多くのファンで賑わっていた。構内には鉄道グッズを扱うショップが設けられ、記念品やTシャツ、時計などが売られていた。中には鉄路節の限定品もあり、スタッフは忙しく動き回っていた。

 午前8時30分。ブルーの客車を従えたCK124入線すると、ホームは撮影大会の様相となった。爆竹が鳴り、運転士への花束贈呈が行われる。取り囲む人々は皆、興奮気味で、台湾における鉄道人気の高さを感じさせていた。

 この日、列車は花蓮港線を走り、終点の花蓮港駅で折り返し、北埔駅へ移動。再び進行方向を変えて花蓮駅に戻るというコースをとった。全行程48分と短いものだったが、その後、花蓮後站(裏出口)に設けられた会場で、記念式典が挙行された。この式典には徐亦南台鉄副局長や謝深山花蓮縣長も列席し、盛大なものだった。そして、会場には自強号や旧型気動車、ディーゼル機関車などとともにCK124も展示された。

 今回のイベントは台湾のみならず、日本でも広く報道されたため、各地で日本人鉄道ファンの姿が見られた。台湾鉄路局彰化機務段(機関区)長の宋鴻康氏によると、「今後も別形式の蒸気機関車を復元する計画がありますので、どうぞご期待ください」とのこと。また、鉄道文化協会の会長を務める鄭銘彰氏は「台湾人にとって、鉄道はいつの時代も日常のパートナーでした。現在は鉄道を産業遺産としてとらえ、保存していこうとする動きも盛んです」と語る。確かに建築物をはじめ、台湾ではこういった保存運動は日本よりも熱心だ。

 台湾高鉄の開業や台北―花蓮を2時間で結ぶ新型特急太魯閣号の登場と、鉄道の高速化はめざましいが、地道に台湾の社会を支えてきた老兵にも、人々は熱い思いを寄せている。そんなまなざしを受けながら、CK124警笛を鳴らし、白い煙を吐き出していた。

 

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