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まだまだ冷めない日本人の新幹線熱

『な〜るほど・ザ・台湾』片倉佳史のもっと知りたい台湾 2007年10月号掲載

 鉄道の話題が続いて恐縮だが、先日、縁あって台灣高速鐵路( TUSR・以下台湾高鉄)執行長(CEO)の欧晋徳氏をインタビューする機会を得た。周知の通り、台灣高速鐵路公司はマスコミへのガードの堅さで知られている。実際、執行部が外国人記者の単独取材を受けるケースはほとんどなく、実に貴重な40分となった。インタビューの内容については某鉄道雑誌に記事として掲載されるので、そちらを参照していただきたいが、その中で「日本人の鉄道好き」が話題となった。

 言うまでもなく、日本は世界に冠たる鉄道大国である。路線長そのものはロシアや中国、インドなどに及ばないが、その路線密度や輸送規模を考えると、ここまで鉄道が暮らしに密着している国は珍しい。台湾も世界有数の鉄道大国である。古くは清国統治時代を端緒とし、日本人の手によって路線網が整備された。現在もそのシステムは評価が高いが、何よりも今回の高速鉄道の開業は世界の注目を集めた。ちなみに台湾の面積は約3・6万平方キロ。ほぼ同程度の大きさの九州では新幹線が工事継続中だし、オランダに到っては高速鉄道建設の計画すらない。

乗車率などにおいてはそれなりの成績を出している台湾高鉄だが、日本人が抱く台湾高鉄へのイメージはどうか。この点は欧執行長も気になるようだった。個人的な印象ではあるが、台湾高鉄に乗車した邦人の印象はおおむね良好だ。軌道や設備が新しいこともあり、乗り心地は上々で、スタッフもフレンドリー。日本に比べればチケットも安く、デザインやカラーリングも親しみが持てる。 

 台湾高鉄の開業は今年最大のトピックということもあり、私のところにも旅行代理店からツアー企画の相談が舞い込んできたり、旅行誌や鉄道趣味誌のほか、一般誌からの執筆や撮影の依頼も多くなった。同時に、建設時における日本人スタッフのひたむきさをはじめ、鉄道システムや地震対策が評価されるなど、日本の技術をアピールできた部分も大きい。「台湾新幹線」という呼称は、もはや一般名詞として定着しつつあると言っても良いほどだ(本来の呼称はあくまでも「台灣高鐵」)。

 最後に、台湾を訪れた日本人鉄道ファンのエピソードを一つ。彼は開業前から台湾高鉄に乗ることを心待ちにしていたという。香港出張の折、彼は台北経由で帰国するスケジュールを組んだが、悲しいかな、サラリーマンの現実で台北に滞在できたのは半日のみ。結局、桃園国際空港から高鉄桃園駅までバスに乗り、2駅間だけ台湾高鉄に乗車。台北下車後は駅前のK−Mallに直行し、19800元也の鉄道模型セットを購入。帰路は高鉄経由では間に合わないので、従来のエアポートバスで空港へ向かったのだとか。いやはや、強者はいるものである。

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