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バナナ畑をゆくローカル線 集集線の旅

『な〜るほど・ザ・台湾』観光最新情報 掲載

台湾中部を走るローカル線の旅。
車窓にはバナナ畑が広がり、南国情緒がたっぷり。
1999年の地震から復興を遂げた沿線の息遣いを感じる旅。
ディーゼルカーに揺られながら、大自然を満喫しよう。




水力発電所建設で設けられた私営鉄道

 集集線は台中郊外の二水から車■までを結んでいる。その距離はわずか29.7キロ。全行程1時間あまりの小さな旅だ。沿線にはバナナ畑が広がり、亜熱帯植物が生い茂る。子供から大人まで、高い人気を誇る路線だ。

 

 この鉄道の歴史は意外にも古く、1921(大正10)年に遡る。その契機となったのは水里に水力発電所を建設する計画が立ったこと。つまり、集集線は水力発電所の資材運搬を目的に敷設されたのだ。この発電所は濁水渓の流水を地下水路によって日月潭に流し込み、ここを貯水池として発電。新興都市の高雄を発展させるためだった。集集線も当初は台湾電力会社の経営だったが、後に台湾総督府に買収され、官営鉄道となった。

 旅のスタートは二水駅から。プラットホームで列車を待っていると、カラフルなペイントのディーゼルカーがやってくる。エアコン付きなのは嬉しいが、窓が開かないのはちょっぴり残念。座席も通勤電車のようなロングシートだ。

 

 車窓にはのどかな田園風景が広がり、退屈しない。モダンな駅舎が自慢の濁水駅は、震災後に建て直され、モダンな造りとなっている。駅舎の隣りにはかつてバナナの検査所だった倉庫が見える。次の龍泉駅を過ぎると、クスノキが両脇に並んだ道路が見えてくる。ここは枝葉が天を覆うように茂っていることから、通称「緑のトンネル」と呼ばれている景観スポット。週末には屋外カフェなども出て、なかなかの賑わいだ。

集集でフルーツ畑をサイクリング

 この沿線で最も高い人気を誇るのは集集駅だ。ここは昔懐かしい木造駅舎が健在。駅舎は1930(昭和5)年2月に竣工したものだが、1999年の大震災で半壊の憂き目に遭った。しかし、地元の人々の保存運動もあり、戦前の設計図をもとに当時のままの状態に復元されたという経緯を持つ。今では街のシンボルともなっており、行楽客が必ず記念撮影する場所となっている。

 

 この町にはいくつかの見どころが点在している。これらを回るにはレンタサイクルがおすすめ。駅前に何軒かのショップがあり、1日50元程度で借りることができる

 まずは「武昌宮」を訪れてみよう。ここも集集駅と同じく、地震で倒壊してしまったが、その甚大な被害を後世に伝えるため、倒れたままの姿で保存されている。朱色の瓦屋根が飛び落ちた様子が被害の大きさを伝えてくる。しかし、訪問客が多いせいか、近くには屋台などが並んでおり、今やすっかり観光地然としている。

 駅から北西に進んだところにある大衆爺祠には、日本統治時代に神社があった場所。境内には樹齢700年という巨木「集集神木」が立っている。高さは25メートル、樹陰の面積は300坪を超えるという。

 集集の町は小さいので2時間もあれば十分に回れる。観光スポットとされているところ以外にも、バナナやドラゴンフルーツ、グアバ、パイナップルなどのトロピカルフルーツが実ったりしており、サイクリングにはもってこいの環境だ。ぜひ、のんびりと散策を楽しもう。

水里名物はアイスキャンディー

 水里駅は集集線沿線で最大の人口を誇る。ここは日月潭や東埔温泉への入り口となっている町で、交通の要衝だ。これといった観光スポットはないが、田舎町らしい情緒に満ちている。駅前通りを進んでいくと、濁水渓が勢いよく流れており、ラフティングを楽しむ人々の姿も見える。

 山の上には発電所があり、ここで作られている「二坪冰」と呼ばれるアイスキャンディーがこの地の名物となっている。マンゴー味や緑豆味など20種以上のフレーバーが揃っている。さらに、町から少し離れたところには、歴史ある窯釜を整備した「水里蛇窯陶芸文化園区」があり、大勢の観光客が訪れている。こちらも時間があればぜひ足を運んでみたい。

木の香りに包まれた終着駅・車■

 旅の締めくくりは車■駅。ここはログハウス風の立派な駅舎が迎えてくれる。ここは林業で栄えた土地で、今も木製ハガキや桶など、木製グッズをおみやげとして売る店が並んでいる。少し歩くと、朽ち果てた製材所や当時の工員宿舎が残っており、独特な雰囲気に包まれている。かつての貯木地の向かいには日本風の休憩所も設けられている。
 素朴な風情溢れる集集線の旅。台北からの日帰りも可能だが、できれば日月潭と組み合わせ、ゆっくりと訪ねたい。なお、列車本数は約2時間に1本程度と少ないが、濁水から水里まではバスが並行して走っているので、これらも上手に利用しよう。

アクセス

列車は毎日9往復。二水から終点の車■までは所要約50分。台中から集集線が分岐する二水までは所要約1時間。なお、集集線の一部の列車は台中始発となっている。水里から台中へは南投経由の總達客運が15分間隔で出ている。台中までは所要2時間30分。このバスは集集と濁水を経由するので、列車と組み合わせて利用するといい。

(文章中の■=土へんに呈)

※交通機関や宿泊先の情報は「な〜るほど台湾」に掲載時のものです。現在とは異なります。

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