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端午節とドラゴンボートレース

『な〜るほど・ザ・台湾』片倉佳史のもっと知りたい台湾 2007年7月号掲載

 

旧暦5月5日の端午節。この日には台湾各地でドラゴンボートレースが行われる。今やすっかり定着したイベントで、この時期の風物詩と言ってもいい。外国人留学生の混成チームや日本からの遠征チームもあることから、最近では日本でもある程度の知名度を誇るようになった。なお、漢字ではこの大会を「龍舟賽」と記している。

大会の前日と当日、私は台北市北部を流れる基隆河の河川敷に赴いた。ここは蛇行を繰り返す基隆河の中で唯一、ほぼ直線となっている区間で、その様子から「大直」という地名が誕生したと言われている。新興住宅街として発展している内湖地区を結ぶ大直橋の辺りだ。

河川敷は陳水扁総統の台北市長時代に整備され、サイクリングロードやテニスコートなどが広がっている。日陰が少なく、日中にここを訪れるとかなりつらいものがあるが、市内指折りの緑地だけあって、早朝から多くの人々が身体を動かしている。

雨上がりということもあって、大会前日の河水はひどくよどんでいた。それでも、熱心にオールを漕ぐ選手たちの姿は見られた。レースは500メートルの距離を競い、ゴール地点の旗を取った者が勝ちとなる。漕ぎ手は18人。船の左右それぞれ9名の選手が並ぶ。このほか、指揮を担う「鼓手」と、舵を取る「舵手」、そして旗を取る「奪標手」がおり、計21人でチームは構成される。

ドラゴンボートには興味深いエピソードが隠れている。その昔、憂国詩人として名高い屈原が、楚が秦に併合されることを知り、世を憂いて川に身を投げた。彼を慕った民衆は、銅鑼を打ち鳴らして小舟で捜索したという。これがドラゴンボートの始まり。そして、亡骸が魚に食べられないようにと、ちまきを投げながら探したというエピソードもあり、これが端午節とちまきの関係を生んだ。

現在、ドラゴンボートレースは台湾南部の台南や高雄でも開催されている。注目したいのは、台北ではあくまでも「中華民族」の伝統行事とされているのに対し、南部では「台湾土着の郷土文化」と位置づけられていること。特に台南の場合、レースのみならず、儀式を重視することで郷土文化の意味合いを強調している。政治的色彩というものはこんなところにも表出している。

大会当日、会場では外国人選手を数多く見かけた。さっと見回しただけでもドイツやフィリピン、在米華僑などの選手団がおり、華僑によってレースが伝えられたという南アフリカの場合、なんとナショナルチームが派遣されていた。国際化が進むドラゴンボートレース。今後はどのようなスタイルに変わっていくのだろうか。興味の尽きないところである。

 

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