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開業前の林口線に体験乗車

『な〜るほど・ザ・台湾』観光最新情報 2005年12月号掲載

台湾にも鉄道を愛するファンがたくさんいる。
そして、鉄道から社会を考え、文化を見据えようとする人々がいる。
鉄道文化協会はそんな人々が集まって組織された団体。
1995年10月22日の創設から10年。
その記念イベントに参加してみた。

初日、記念列車は彰化を旅立った

彰化は言わずと知れた鉄道の街。台湾で唯一残された扇形機関庫は鉄道博物館として整備が進められ、注目を集めている。今回のイベントもここが起点となった。
扇形機関庫を見学し、イベント用に仕立てられた特別列車に乗り込む。大きなディーゼル機関車が水色の客車を牽引する。この客車列車はすでに中部以北では見ることができなくなっている懐かしいもの。あえて古い車両を選んでいるのは、沿線各地の発展に貢献してきたことへのねぎらいからなのだという。

内湾線を走る客車列車

 列車は彰化を10時50分に出発し、「海線」を走って北上する。地図を見ればわかるように、彰化と竹南の間には海線と山線の2つのルートがある。
 勾配がきつかった山線に対し、スピードアップを目的に新設されたのが海線だった。しかし、年を経るごとに大都市・台中を沿線に抱く山線が活況を呈するようになり、海線は没落していった。それでも、ローカル線に転落してしまったぶん、海線には戦前の木造駅舎が残されたりして、旅情がたっぷり感じられる。この列車も途中の大山駅で小休止。鉄道作家である洪致文氏の解説で、老駅舎の見学会が実施された。
 新竹からは内湾線に入る。支線らしいたたずまいを残したこの路線は、週末を中心に行楽客が押し寄せ、沿線は意外にも賑やかだ。天候にも恵まれ、緑の中を列車は軽快に駆け抜ける。列車は無事、内湾駅に到着。ちょっとした撮影会のあと、回送列車は竹東方面へ戻っていった。

日本から駆けつけた熱心なファンも

 今回のイベントには日本からもファンが駆けつけた。
 東京在住の片木裕一さんは台湾と鉄道を心から愛する台湾好き。今回は盛りだくさんのイベント内容に驚き、
 「すでに次回のイベントについてアイデアを練っているというメンバーに改めて圧倒されました」
 と語る。そして、大阪在住の永野修一さんも
 「来るまではいろいろと迷いましたが、やっぱり来てよかったです」
 と、熱心にシャッターを切っている。なぜ迷ったのかと言えば、両氏とも、この2日間のイベントだけのために訪台しているのだ。金曜日の夜に台湾へ到着し、月曜日には帰国。しかし、台湾の鉄道ファンとの交流は楽しかったようで、趣味に国境はないことを実感。充実した2日間だったと熱っぽく語っていた。

 


林口線に体験乗車

翌日は新竹から気動車で林口線に入った。林口線は桃園と林口を結ぶ18・4キロの路線。本来は貨物線だったが、10月27日から桃園県政府の出資によって旅客営業が行われている。鉄道文化協会のイベントはそれに先立つこと4日間。言ってみれば、体験乗車のような雰囲気だった。
 駅はいずれも仮設ホームがあるだけのシンプルな作り。途中、長栄グループの本社の裏手や台茂ショッピングセンターの傍らをかすめ、中正国際空港からも遠くないところを通る。歴史好きとしては、旧桃園神社の桃園忠烈祠の付近を走ることに注目だ。正直なところ、活況は期待できなそうだが、交通機関として鉄道が注目されてきているのは事実。第三セクターという試みにも注目だ。
 この路線は地域住民の通勤通学輸送を考慮して旅客営業が始まった。地域に密着した庶民の足として、林口線は重要な役割を演じていくだろう。今後に注目だ。
 盛況のうちに終わった今回のイベント。日頃はなかなか乗ることができない旧式の列車と、林口線の試乗体験。そして、台湾の鉄道文化を見守っていこうとする人々の姿はとても印象的だった。魅力いっぱいの台湾の鉄道。その奥深さを体感できる1日だった。

 

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