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ローカルバスに揺られてワンディトリップ
淡水ー基隆、北部海岸の旅

『な〜るほど・ザ・台湾』観光最新情報 掲載

台湾でもようやく秋の気配が感じられるようになった今日この頃。
ローカルバスで巡るショートトリップはいかがだろうか?
澄み切った青空の下、
思わぬ出会いや小さな発見を楽しんでみよう。

旅立ちは港町風情の漂う淡水から

 淡水から三芝、金山、萬里を経て基隆へ到る海岸道路。このルートには素朴ながらも魅力的な見どころが続いている。波浪浸食によって形成された石門洞や金山温泉、そして、新鮮な海鮮が味わえる観光漁港。いずれも旅行ガイドなどではほとんど紹介されていないという穴場中の穴場。しかもローカルバスが頻繁に運行されており、気軽に途中下車が楽しめるのだ。

 北部海岸を走る路線バスは基隆客運と淡水客運の2社が運行している。それぞれが区間運転を含めてそれなりの本数を出しているので、待たされずに旅ができる。長くても30分も待たずに次のバスが来てくれる。この2社以外にも、台北からは国光客運が萬里経由で金山までを結んでいるほか、皇家客運も台北から陽明山を経由して金山までの路線を運行している。ちなみに皇家客運のバスはシートが片側1列・2列という贅沢な車輌だ。

 高層マンションが林立する住宅街を抜けると、バスはなだらかな山々に囲まれた間を走るようになる。そして、左手に青い海原が現れる。ここは浅水湾と呼ばれるビーチで、夏には海水浴を楽しむ人たちであふれるが、この時期はさすがにひっそりとしている。しかし、小高い丘の上には海原を眺められるオープンテラスのカフェが並んでおり、美しい景観を楽しめるので、途中下車してみる価値はある。

三芝―とびきり新鮮な海鮮を味わう

 三芝には李登輝前総統の生家がある。「源興居」と呼ばれているこの家屋は簡単な解説板があるばかりでとてもシンプル。訪れる人も多くはないようだ。バス停からはやや離れているが、市街地から歩いて15分ほどだ。また、バス停近くには「二號倉庫」という名のカフェがある。ここは日本統治時代に建てられた倉庫を利用した個性派カフェ。かつては一号倉庫、二号倉庫と呼ばれる農業倉庫だったが、一号倉庫は三芝の物産展示館となり、二号倉庫がカフェと生まれ変わった。天井が高く、なかなか居心地が良い。

三芝の先には台湾最北端の地・富貴角がある。その手前には富基漁港という観光整備された漁港があり、水揚げされたばかりの海鮮が味わえる。ここは生け簀に入ったネタを自分で選び、隣接されたレストランで調理してもらうというシステム。料理代は一皿あたり100元前後。台北市内では考えられないほどの安さで新鮮な魚介類が食べられるとあって大人気だが、少なくても4人程度の人数は必要だ。

グルメと言えば石門郷の名物であるちまきも忘れてはならない。石門郷公所(役場)脇に位置する「劉家肉粽」という店が人気で、いつ訪れても客足が絶えない。扱う種類は豊富で、10種類ものちまきが並んでいる。テイクアウトのみだが、いずれも一個20元前後と安い。

その先には石門洞という奇岩がある。大きくはないが、石で築かれたアーチのようだ。日本統治時代からすでに景勝地として知られていただけのものはある。周辺では磯遊びをしている人たちもいて、途中下車が楽しいスポットだ。

犬を祀っている珍しい廟「十八王公廟」も訪れておきたい。ここにはその昔、17人の商人が海上で遭難した際、絶望的な状況の中で同船していた犬も忠義を尽くして海に身を投じたという悲話が伝わっている。言わば台湾版忠犬ハチ公だ。その犬を祀っている廟がここなのだ。地下にはお墓もあり、かなり不気味な雰囲気。しかも、ここは夜の商売に就いている人々が多く集まると言われ、夕暮れ以降に参拝客が増えてくる。なお、現在でこそ、石門のちまきが有名になっているが、もともとはこの廟の参拝客を相手にちまきを売っていたのが始まりなのだとか。現在も屋台は出ているので、食べ比べをしてみよう。

金山―小さな温泉郷でひと休み

ローカルバスは海に沿いながら軽快な走りを見せる。比較的大きな町が見えてきたら、そこは金山だ。旧名は「金包里」。この町を散策する起点は金山市場。とれたての野菜や果物が山積みとなっていて壮観だ。中でも金山の特産とされるタロ芋はとりわけ存在感を示している。紅心甘藷(サツマイモ)と跳石芋頭(タロイモ)が広く知られ、料理に用いられるだけでなく、これらのイモを団子にしたデザート「芋圓」にもなっている。

また、食事の時間に金山に寄れたら,廣安宮という廟の前で食べるアヒル肉も味わってみたい。ここのアヒルも金山名物で、わざわざこれを味わうために台北からやってくるファンもいるという。放し飼いで育てられたアヒルは身が引き締まっている。一口食べるだけで、旨味が口全体に広がってくるようだ。オーダーはこちらから人数を伝えれば適当に見繕ってくれる。予算は300元もあれば十分だ。

金山は温泉の町でもある。ここは山麓から海岸エリアまでのエリアに4種類の温泉が湧いている。いくつかの公共浴場もあるが、最近ではスパ施設を備えた高級温泉浴場も増えている。中でも「舊金山總督温泉」は海と山が眺められる露天風呂があり、人気が高い。ここの温泉の泉質は「酸性硫黄塩質」で、泉源に海水が混じるため、舐めると少々塩っぽさを感じるのが特色。消炎殺菌と美肌効果があると言われ、湯上がり後は肌がつるつるになる。

金山の郊外にもいくつかの見どころが点在するのでそのいくつかを紹介しておこう。まずはテレサテンのメモリアルパーク。金寶山と呼ばれる高級霊園で、海原が見おろせる高台にある。墓地には銅像が建てられ、往事の歌声が途切れることなく流れている。今でも日本や香港から数多くのファンがやってくるという。

また、近くにある台湾唯一の屋外展示美術館「朱銘美術館」も訪れてみたい。朱銘は台湾を代表する彫刻家で、3万2千坪という広大な敷地に彼の作品が展示されている。夏場では暑さもあって、参観もひと苦労だが、この時期なら、散策を兼ねてのんびりと歩くのも悪くない。なお、いずれも金山からはタクシーを利用することになる。

基隆行きのバスが金山を出ると、すぐに加投温泉の温泉街に出る。ここは道路沿いにいくつかの浴場があり、気軽に温泉浴が楽しめる。あまりにも近いため、どうしても金山温泉とひとまとめにされてしまうのだが、泉脈は全く別のもの。日本統治時代は砂地から直接湧き出る温泉として知られていた。

浴場は台湾ではよく見かける個室風呂がずらりと並ぶスタイルが多い。しかし、最近の注目は「喜凱亞温泉酒店」。ここは和のデザインを取り入れた高級スパリゾート。日本の感覚で温泉浴が楽しめる。宿泊もできるので、贅沢な週末を過ごしてみてはいかがだろうか。日帰りプランも用意されており、入浴と休憩、食事がセットになったものもある。

野柳―台湾を代表する観光地

野柳は古くから観光スポットとして知られてきた場所。やや古くさい感じもするのだが、それなりの景観は楽しめる。ここは1700メートルに渡る岬の上に奇岩が並んでいる。いずれも造山活動で表面へ出た岩石が風化と海蝕を受けてできたもの。「蜂窩岩(蜂の巣岩)」や「女王頭蕈(クレオパトラの頭)」などが知られている。どこへ行っても記念撮影を楽しむ若者がいるのが印象的だ。ただし、日差しが思いのほか強いので注意しよう。

高級ホテルや別荘が並んでいる翡翠湾は、北部を代表するマリンリゾートだ。ここにはハワードプラザホテル系列の太平洋翡翠湾福華渡假飯店が中心になって開発されたという経緯をもつ。客室すべてオーシャンビューで、リッチな気分が味わえる。海水浴のシーズンでなくても、美しい浜辺を散歩するのは楽しい。館内設備も充実しているので、週末の手頃な保養地としておすすめだ。

ここまで来ると基隆まではあと少しだ。旅の最後は、名物料理がいっぱいの廟口夜市で締めくくろう。ここはデザート類が充実していることで知られる。伝統的な屋台料理のほか、ジェラート風のトロピカルシャーベットなど、新しい味覚も続々と登場している。台北行きの最終バスに乗り遅れないように注意しながら、食べ歩きを満喫しよう。

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