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シーサイドラインを走るバスに乗って
台北県石門郷

『な〜るほど・ザ・台湾』観光最新情報 2007年8月号掲載

 台北から気軽に楽しめるワンデイトリップ。今月は MRT淡水線の終着駅・淡水から石門郷を訪れてみよう。磯遊びが楽しいローカルバスの小さな旅だ。
 淡水から基隆までの北部海岸は美しいシーサイド・ビューで知られている。しかし、見どころは海岸線だけではない。李登輝元総統の生家がある三芝や海鮮料理が美味しい富基漁港、温泉で知られる金山、そして台湾北部を代表する景勝地である野柳など、盛りだくさんの旅が楽しめる。今回はその中の石門郷にスポットを当て、旅を楽しんでみよう。

 淡水を出て、三芝の街を通り過ぎたバスは、台湾島で最も北に位置する石門郷に入る。ここではまず、台湾最北端の地・富貴角を訪ねてみよう。シンボルとなっている富貴角灯台は黒と白の格子模様が印象的。周囲には風と波に削られた奇岩が連なっている。これらは「風稜石」と呼ばれ、大屯火山群の爆発で出た溶岩がモンスーンと海蝕によって鋭く削られたもの。ちょっとした地質探索が楽しめるほか、付近には小さな砂丘も見ることができる。
 岬の手前にある富基漁港では海鮮料理を味わいたい。ここは観光用に整備された新しいスタイルの漁港で、港と海鮮レストランが一体化している。どこも活きの良い魚介類を並べており、ここでお好みのネタを選ぶと、裏に設けられた調理場でさばいてくれる。調理代は基本的に一品100元を加算。魚介類は種類が豊富で、巨大なロブスターや日本では見られないカラフルな魚たちも目にできる。富基漁港の名産とされるのは「花蟹」。薄い紅色をした大きな蟹で、淡泊な味わいが特色だ。

 その先、石門の集落を過ぎてしばらく進むと、石門洞に出る。これは海に臨んだ巨岩が長年の波浪浸蝕で洞窟化し、さらなる浸蝕で反対側まで突き抜けたトンネル状の洞。高さは約8メートルにおよび、石で築かれた巨大アーチのような風貌だ。古くは日本統治時代から景勝地として名を馳せてきた。
 平日は人影を見かけることも少なく、波音ばかりが響いているが、週末になると状況は一変する。自然が創り出した特殊景観を目にしようと大勢の人たちがやってくる。周囲には散策歩道や涼み台、展望台などの施設が設けられているが、何よりもの魅力は入り江で楽しむ磯遊び。童心にかえって岩間に隠れる蟹や小魚と戯れよう。もちろん、広々とした海原を眺めるだけでも、日常のストレスから解放されること請け合いだ。なお、本誌40ページでも紹介している石門名物のチマキは、石門郷公所(役場)近くのほか、石門洞付近でも味わうことができる。

 その先、さらにバスに揺られると、北台湾で最も賑やかな廟の一つとされる 十八王公廟がある。ここには「台湾版忠犬ハチ公」とも言うべき犬が祀られている。清国時代、中国大陸から渡ってきた17人の商人が遭難。その際、生き残った犬が忠誠を尽くすべく、自ら海に飛び込んだという言い伝えがある。これに感動した村人が犬を一緒に祀ったのがこの廟の始まり。参拝客は夜が更けていくにつれて多くなる。

 商人がタバコ好きだったことから、タバコをお供えするのがしきたりとなっていることを知っておこう。御利益が大きいのか、近くには新十八王公廟も竣工している。周りには名物のチマキや焼酒螺(酒で煮込んだ貝)を売る屋台が出ており、食べ歩きも楽しい。

 ひと昔前のフォークソングではないが、バスで楽しむ岬めぐり。バスは区間運転を合わせると、日中でも20分おきくらいで便がある。ただし、夜間はぐっと減ってしまうので注意が必要。なお、運賃は乗車時に行き先を運転手に告げ、いくらかを教えてもらうという方式。言葉に自信がなければ、事前に行き先を紙に書いておくと便利だ。喧噪の台北から飛び出して、ローカルバスの旅に出てみよう。

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