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2018年5月29日(火曜日)

書評・台湾の声

【良書紹介】片倉真理著/片倉佳史写真『台湾探見 Discover Taiwan―ちょっぴりディープに台湾体験』

台湾の声編集部 T・Y

 本書は台湾在住20年の作家、片倉真理氏が在住者ならではの触覚を張り巡らし、ちょっぴりどころではない、かなりディープな台湾を丁寧に紹介した本だ。写真を担当するのは夫で作家の片倉佳史氏。夫婦が日々暮らし、東西南北、離島まで踏査、取材した台湾のありのままの姿を私たちに伝えてくれている。

 まず冒頭は迫力満点の台中県大甲の媽祖巡礼でスタート。全国各地から延べ100万人の老若男女が参加するというこの巡礼を、ほぼ毎年取材しているという著者は、食事や飲み物を提供するボランティア精神や、互いに励まし助け合って巡礼を行う人々の姿を通し、「単なる宗教行事」ではなく「『台湾人』という民族性を作り上げる文化そのもの」と評す。

 さらに、マンゴーの特産地・台南県玉井、凍頂烏龍茶の郷・南投県鹿谷、「暮らしたい都市」上位の台中、郷土の味を愛し抜いた人々が郷土の味を守る嘉義、昔も今も「都」の台南、台湾各地に居住し独自の豊かな文化をもつ原住民族の村々、特攻隊が飛び立った宜蘭、質素倹約の客家人の故郷・高雄県美濃、石造りの家屋建築が独特な馬祖……と台湾を一通り巡った後、最後に、「台湾らしさ」を求めた若者が新しい文化を発信する台北で、本書の旅は終わる。

 本書が数ある台湾関係の書籍やガイドブックと一線を画すのは、取り上げるトピックスについて、その土地の風土や文化、歴史がしっかりと解説されているうえに、必ず「生身の人物」が登場することだ。取材対象者への丁寧な聞き取り、取材で出会った人々との交流なくしては、ここまでリアルな台湾は描けない。これはある種、民俗学的研究の一面を持つ書と言っても過言ではないだろう。

 そして、もう一つ読者にとって大きな魅力は、全編にわたって各地の特色あるグルメの数々が写真と共に散りばめられている点だ。味はもちろん、具材の詳細や料理の生い立ち、そして作り手の思いまで、細かに話を聞く徹底した取材ぶりである。

 台湾在住20年が経った今も「毎日が刺激と発見の連続である」と著者は断言する。本書を読めば、台湾が好きで何度も訪れている人も、台湾についてほとんど知らないという人も、そして台湾に生まれ育った台湾人も、目から鱗の台湾を再発見するに違いない。

片倉真理著/片倉佳史写真『台湾探見 Discover
Taiwan―ちょっぴりディープに台湾体験』
ウェッジ刊 2018年4月20日発行 定価1500円+税
http://taiwannokoe.com/ml/lists/lt.php?tid=7wEFTdxLozyCvLz2Or1ZPZ/+01bIGOqrrgSmFhYRfCntqr6W/hwK76ygp+5s+nAt


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